キャンディ・キャンディ事件とマンガ原作者の権利

2004年 4月13日
更新 2017年 2月10日

この記事は、2004年に別サイトで書いた記事に加筆修正したものです。
関連記事:キャンディ・キャンディ事件をふりかえる



※水木氏側の論旨に異論や疑問点はあるものの、この事件に関しては、当然ながら水木氏側を支持する事を念のために書いておきます。

 キャンディ・キャンディ事件というものがある。マンガ『キャンディ・キャンディ』の絵の部分のみを使用する場合の著作権について、原作者の水木杏子(名木田恵子)氏とマンガ家のいがらしゆみこ(五十嵐優美子)氏が裁判で争い、水木氏が勝訴した事件である。
 「マンガ原作」とは世間一般でいう「原作」ではなく、映画における脚本に近いものである。ただし、脚本形式で書かれるとは限らず、『キャンディ・キャンディ』の原作の場合は小説形式だったそうである。

 三つの解釈
 共同で作った著作物に、「共同著作物」と「結合著作物」がある。分割して利用できないものが「共同著作物」で、分割して利用できるものが「結合著作物」である。たとえば、歌は、歌詞とメロディーに分割できる結合著作物である。
 マンガが「共同著作物」であれば、絵の部分の利用にも原作者の許可が必要であり、「結合著作物」であれば、絵の部分だけの利用は、マンガ家だけの許可で利用できる。メロディーだけの利用に作詞者の許可が要らないのと同じである。
 裁判所の判断はどちらでもなく、「二次的著作物」というものであった。
 小説がマンガ化された場合、マンガに対してマンガ家が権利を持つとともに、原作者も原著作者として権利を持つ。「マンガ原作」は一般的な意味の「原作」とは違い独立して公開される作品ではないが、小説のマンガ化の場合と同じく、水木氏は原著作者として権利を持つという判断になった。
 この判断に対し、マンガ原作が、一般的な意味での「原作」と同じ原著作物として扱われるのは違和感があるという意見がある。また、原著作者の権利はマンガ家の権利よりずっと強く、バランスが悪いのではないかという意見もある。

 水木氏側は当初、共同著作物または二次的著作物と主張していた。どちらが認められても水木氏側の勝訴となる。
 それに対し、いがらし氏側は、結合著作物という主張ではなく、原作は存在しない、単なる参考資料との強気の主張をしていた。
 初期の主張を見る限りは、共同著作物を主張していたのは水木氏の側だが、その後、
「いがらしサイドがなにより望んでいるのが<共同著作物>という判断なのです。」(「この事件に群がる学者たち」)
という主張に変わっている。

 参照される判例
 いがらし氏の弁護士が作成したという報告書が、水木氏のサイトの「<黒い>報告書について」で紹介されている。その中に次のような部分がある。
「近時の判例(東京地裁平成9年3月31日、判例時報1606号、118頁参照)によれば、漫画がそれを描いた者と原作者の共同著作物といえるためには、原作者が基本的構成や吹き出し部分の台詞について具体的指示を与えて、漫画家がその指示通りに漫画を描き、原作者が最終的なチェックをしたいう事実が必用だとされています。」
 ここで挙げられている判例は、書籍の中に含まれる、イラスト・マンガの部分の著作権に関するもので、次のページに判決全文がある。イラストと説明文の関係は結合著作物、四コママンガは共同著作物と判断されている。
日本ユニ著作権センター/判例全文・1997/03/31
 四コママンガの制作過程については、報告書の判例紹介に問題はない。
 しかし、「必用だとされています」というように必要条件と見るのには疑問がある。素直に判決文を読むと、必要条件というより、十分条件のように思えるのである。
 この判例は、牛木理一氏の「漫画キャラクターの著作権保護」でも、
「東京地平9年3月31日判(判時1606号118頁)の「在宅介護アドバイス」事件では、イラストと説明文との関係を結合著作物と認定した。斉藤前掲104頁。「キャンディ・キャンディ」事件では、東京高裁はストーリー原作と漫画展開との関係を共同著作物と認定したが、疑問である。むしろ、結合著作物と解した方が妥当である。」
と、取り上げられているが、マンガと比較するには不適当なイラストの件のみで、四コママンガが共同著作物と判断された件には触れていない。

 マンガ原作と映画の脚本
 マンガにおけるマンガ原作に近いものに、映画における脚本がある。映画の脚本も、著作権法上、映画の著作物の原著作物として扱われている。マンガ原作がマンガの原著作物と言う判断には違和感があるのだが、映画の脚本との関係でいえば、一貫性はあるといえる。
 映画業界においても、脚本を原著作物とする判断への違和感はあるようである。「映画振興に関する懇談会(第12回)議事要旨|文化庁」では、
「映画は著作権法の中で文芸の著作物を映像翻案化した二次的著作物という扱いになっている。映画は文芸とは大きく異なり,製作スタッフ,監督,シナリオ作家などの人々が全力で映画製作に取り組むものであり,文芸の著作物を映像翻案化した著作物と言われてはたまらない。」
との意見が述べられている。


リンク

名木田恵子(水木杏子)
キャンディキャンディ事件HP

牛木理一
連載漫画の原作とキャラクターの絵との関係
漫画キャラクターの著作権保護  -キャラクター権の確立への模索-

水谷直樹
漫画が原作品の二次的著作物であることを認め, 原作品の著作者の権利行使を認めた事例

松村信夫
「二次的著作物の利用と原著作物の著作者の権利(キャンディ・キャンディ事件)」
http://homepage3.nifty.com/matsumura-lo/oboe/ronbun/200208_chizaikanri617_kyandhi.htm(リンク切れ)

荒竹純一
「キャンディ・キャンディ事件(漫画の原作者の権利)」
http://www.netlaw.co.jp/topics/20020403-can.html(リンク切れ)

豊田きいち
「キャンディ・キャンディ事件の不明なところ」
 「著作権ジャーナル」 (会員制) 日本ユニ著作権センター
http://plaza4.mbn.or.jp/~jucccopyright/member-jourlist.html(リンク切れ)

渡邉文雄
長編連載漫画における原作者の権利範囲と著作権法28条


雑誌・書籍

三村量一
「漫画の著作物の複製件・翻案権の侵害」
 『現代裁判法大系 26 知的財産権』 1999年 新日本法規出版
タイトル不明
 『法曹時報』 法曹會/大学図書 2000年

豊田きいち
「キャンディキャンディ」(出版・著作権MEMO No.124)
 『出版ニュース』 1999年4月上旬号 出版ニュース社
「キャンディ・キャンディ再論」(出版・著作権MEMO No.126)
 『出版ニュース』 1999年6月上旬号 出版ニュース社

作花文雄
「Q&A/キャラクターの保護と著作権制度」
 『月刊コピライト』 1999年5月号 著作権情報センター

牛木理一
連載漫画の原作とキャラクターの絵との関係
 『パテント』 1999年7月号 日本弁理士会
漫画キャラクターの著作権保護  -キャラクター権の確立への模索-
 『パテント』 2001年12月号-2002年2月号
「「キャンディ・キャンディ」著作権侵害事件」
 『 ニューズレター』 vol.1-vol.3 日本マンガ学会 2002年

著者不明
「連載漫画の原作原稿と漫画への翻案について - 「キャンディ・キャンディ事件」」
 『発明ライフ』1999年11月号発明学会

長塚真琴
「漫画の登場人物と原作者の著作権―キャンディ・キャンディ事件」
 『北大法学論集』 50巻5号 北海道大学法学部 2000年
「キャンディ・キャンディ第一事件高裁判決およびフジサンケイアドワーク事件地裁判決」
 『特許研究』31号 特許庁 2001年

清水幸雄
「二次的著作物に及ぶ原権利者の範囲」
 『月刊コピライト』 2000年6月号 著作権情報センター

中島徹
「連載漫画の原作者と作画家との権利関係」
 『判例評論』 496号 (『判例時報』1706号) 判例時報社 2000年

日向史
「漫画の作画部分のみの利用にストーリー原作者の権利が及ぶか」
 『著作権研究』 26巻 著作権法学会 2000年

堀口亜以子
「漫画と原作―キャンディキャンディ事件」
 『著作権判例百選〔第三版〕』 (ジュリスト別冊No.157) 有斐閣 2001年

滝井朋子
「長編連載漫画の主人公の絵に物語原(著)作者の二次的著作権が及ぶとされた例」
 『判例著作権法』 東京布井出版 2001年

水谷直樹
漫画が原作品の二次的著作物であることを認め, 原作品の著作者の権利行使を認めた事例
 『発明』 Vol.99 2002年

松村信夫
「二次的著作物の利用と原著作物の著作者の権利(キャンディ・キャンディ事件)」
 『知財管理』 2002年8月号 日本知的財産協会

三浦正広
タイトル不明
 『岡山商大論叢』 38巻1号 岡山商科大学 2002年

酒井雅男/メディアトゥデイ研究会
「キャンディ・キャンディ事件 ~漫画原作者の権利~」
 『デジタル時代の著作権最新Q&A』 183-185p ユーリード出版 2003年

安藤健二
「引き裂かれたリボンーキャンディ?キャンディ」
 『封印作品の謎2』 太田出版 2006年
 『封印作品の闇』 だいわ文庫 大和書房 2007年

 

b8270.hateblo.jp

 

海外の陰毛処理


海外の陰毛処理については、昨年、次の記事が話題になったとき少し調べたので、関連情報を紹介します。
陰毛は剃るべきなのか? - GIGAZINE

研究論文:女性のアンダーヘア処理と性的偏見
2014年の論文。これまでの研究も紹介されています。

Evulvalution: The Portrayal of Women's External Genitalia and Physique across Time and the Current Barbie Doll Ideals: The Journal of Sex Research: Vol 48, No 1
2009年の論文。600冊以上の『PLAYBOY』誌で陰毛処理の変遷を調査。

なんでも評点:欧州では若い女性(18歳~25歳)の“パイパン”率が50パーセントに上ることが判明
欧羅巴陰毛事情 : 観測所雑記帳
欧羅巴陰毛事情 2 - むだ毛のない肌、欧州男子の常識 : 観測所雑記帳
米国人女性が主導する人類の隠された「進化」 | JBpress(日本ビジネスプレス)
後藤寿庵先生の陰毛推し(R-18注意) - Togetterまとめ
わいせつ基準の変遷 - 仮想と現実
松沢呉一のカシコイおもてなし|第8回(前編)|風俗求人てぃんくる

Why You Need To Know The Complicated History Of Pubic Hair Removal - Role Reboot

例の「児童ポルノ」CGは明らかにアウトだとは思うのですが


「児童ポルノ」CG裁判の二審判決が出ました。
「写真参考のCGでも児童ポルノ」2審も有罪判決 | NHKニュース

すでに多くの人が指摘しているように、この件は、肖像権・著作権的にアウトだと思っています(日本では肖像権は明文化されていないという問題はさておき)。
それがCGと児童ポルノの問題になっているところが悩ましい点です。
アウトだと思うのは、実在人物の写真が元になっているからで、非実在だったら話は別、という点は強調しておきたいと思います。

初期報道では、写真をスキャンして加工したとされていましたが、実際はそうではなかったようです。
したがって、制作の手順としては加工ではなく、一から描いたというのも間違いとは言えないのですが、内容の点からいえば、元写真にかなり依拠したものがあります(とくに顔)。

はてなブックマーク - CGも児童ポルノ、写真以外で全国初摘発 デザイン業の男逮捕 - MSN産経ニュース
2013年の報道。記事自体は消えています。
「少女の写真をスキャナーでパソコンに取り込み」とあるのですが、弁護士ドットコムの記事によると、「「私は参考写真と言ったのに、刑事に『結局素材なんでしょ?』と言われ、調書には素材だと書かれた」などと話した。」ということだそうです。

はてなブックマーク - CG画像児童ポルノ初摘発の波紋 | 東スポWeb - 東京スポーツ新聞社
記事自体は消えています。
この問題を考えるのには画像が必要だと思うのですが、報道ではほとんど出てきません。児童ポルノや児童ポルノの疑いがあるものは載せられないですし、モデルの女性への配慮の問題もあるのでしょうが、画像がないことで分かりにくくなっています。
マスコミ報道で画像が載っていたのは、東スポのこの記事ぐらいかもしれません。画像は被告人(当時は容疑者)のサイトのスクリーンショットで、CGの顔の部分が載っています。

被告人のサイト(現在は消えています)には、次のように書かれていました。モデルが誰かわかるような画像だったことが示されています。
「1980年代の一時、まばゆい光彩を放ちながら儚く消えていった幾多の少女像。 いま精緻な描写のイラストが、それら幻の少女像を鮮やかによみがえらせる—。」
「Q2.『聖少女伝説』で取りあげてるモデルは誰と誰ですか?
A2.モデル名を明示することはご容赦ください。
   ただ、取りあげているモデルは7人で、上記サンプル、およびバナー等で7人が誰かおわかりいただけると思います。」

「理想の人体を描きたい」CG児童ポルノ裁判の被告人が語った「聖少女」を描くワケ - 弁護士ドットコム
「その点について、男性は「顔には記号性があります。誰かの顔に近づけないと、顔として成り立たないと考えています。漠然とした顔だと、イメージもぼんやりしてしまう」と説明した。」とあります。裁判でも、顔を実在の人物に近づけたことは認めています。

2016年の報道(はてなブックマーク数が多いものを選びました)
CGで裸の女児、児童ポルノか芸術か 裁判で争点に:朝日新聞デジタル
CG児童ポルノ有罪 「実在児童描き、写真と同じ」認定:朝日新聞デジタル

【日記】ウィキペディア「シーチキン」からリンクされていたんですが


昨年、「ツナ缶の起源は19世紀」という記事を書いたのですが、数日前からこの記事に関する不思議なアクセスがあります。
記事URLの最後の部分はcanned_tunaなんですが、canned_tuna/にアクセスがあるのです。
微妙な違いではありますが、そんなページは実在しないので、「お探しの記事は見つかりませんでした。」と表示されてしまいます。

気になって調べてみると、「シーチキン - Wikipedia」からリンクされていました。URLが違うだけでなく、タイトルも「ツナ缶の起源について」になっています。
自分で修正するかノートで指摘するかすればいいんでしょうが、ウィキペディアの編集をやめてから10年以上がたちますし、ちょっと億劫です。
それに、ウィキペディアといえば、漢たちと姐御たちが煽りあいdisりあう戦場だし、ブログへのリンクを本人が修正したら、なにを言われるかわかりません。
ということで、ここでメモするだけにしておきます。

ちなみに、ツナ缶の起源は、ウィキペディア日本語版では1903年アメリカ、英語版では1903年オーストラリアになっていますが、実際には19世紀のヨーロッパだと思われます。

b8270.hateblo.jp

コンゴ・カタンガ地方に残された日本人の子供たち

togetter.com

上記まとめのはてなブックマークで、関連情報のあるページを紹介したところ、たくさんのスターをいただきました。ありがとうございます。
ブックマークでは字数上2件しか紹介できなかったので、もう少し詳しく書いてみます。

わたしがこの件を知ったのは、昨年の3月頃だったと思います。当時、2010年の France 24 の報道が、ツイッターやはてなブックマークで若干話題になっていました。
Katanga's forgotten people - France 24

三浦記者が「非常に残念なことに、一部の海外メディアでは、当時鉱山では日本人遺児の殺害が行われていたとの報道がなされています。しかし、私の1年に及ぶ取材ではこれらの事実はまったくでてきていません」と書ているのは、この報道のことなどを指していると思われます。

ウィキペディア英語版では、France 24の報道内容に沿った記述がなされています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Afro-Asians#Katanga_Afro-Japanese

詳細が気になって検索してみると、日本カタンガ協会の田邊好美氏のブログ記事が見つかりました。
一つ目が、この問題のまとめ。二つ目が、テレビ取材について。三つ目が、放映ではカットされてしまった件についてのものです。
アフリカの星 Etoile d'Afrique: 10月2日 日本人を父親とし、コンゴに置き去りにされた子供たち enfants japonais abandonnes au Congo
アフリカの星 Etoile d'Afrique: 11月13日~22日 『世界ナゼそこに?日本人』 Pourquoi es-tu dans ce coin du monde ?
アフリカの星 Etoile d'Afrique: 3月21日 「世界ナゼそこに? 日本人」 「Un japonais, pourquoi dans ce coin du monde ?」

田邊氏は次のように書いています。
「娘たちの年齢は、そのとき14歳、15歳であった。これは日本では犯罪である。相手の日本人は若く20、21歳の男性もいたが、多くは30代、40代の男たちである。日本でも妻帯者である。コンゴ側にとっては日本に妻がいても違和感がなかった。一夫多妻がごく一般的に見られるコンゴ社会である。」

妻帯者の場合、日本の感覚では「結婚」にはならないように思われます。このあたりで双方に認識のずれがあったのかもしれません。
ただし、日本人側が結婚だと思っていなかったとしても、コンゴ側ルールを適用すると結婚ですし、逆に日本側ルールを適用すると年齢がアウトになります。

日本大使館・外務省を通した連絡に対し、日本鉱業は、「個人の問題であり、会社としては介入しない」と回答したそうです

三浦記者もツイートで紹介している日本食食堂は、田邊氏によれば、「 日本のある財団のトップの方が、ムソシの子どもたちの話を日本大使閣下から聞き、ポケットマネーを出してくれた。その資金が食堂開店のベースになっている。去年8月に開店したが経営はまだ軌道に乗っていない。」とのこと。

ちなみに、田邊氏を取材した番組の放映内容は次のような感じです。
[世界ナゼそこに?日本人?知られざる波瀾万丈伝? 【ナゼか未知の国に暮らすワケあり日本人2時間スペシャル!】 ]の番組概要ページ - gooテレビ番組(関東版)

3月1日|佐藤慧 -世界に魅せられて-
ジャーナリスト佐藤慧氏による2011年の取材メモ。「詳しくはいずれ記事を書くのでそちらで。」とありますが、記事になったのかどうかはわかりませんでした。

第 12 章 ザイールに進出した日本企業
背景にある当時の状況を解説したページ。ザイールというのは当時の国名。
ここに書かれているような治安状況からすると、意図的にではなく子供と別れることになってしまった父親もいるのかもしれません。

モブツ・セセ・セコ - Wikipedia
当時の大統領。「東西冷戦を利用して、アフリカにおける反共の砦を以て任じ、その見返りに西側先進国からの支援金を一手に引き受けて、そのほとんどを着服した。またその権力基盤は、鉱山会社の利益に支えられていた」「モブツの不正蓄財は総額およそ50億ドルといわれ」

日本人の話とは別件ですが、コンゴ民主共和国は今でも大変な状況で、その背景には、やはり鉱物資源があるようです。一つ目のリンク先は三浦記者ツイートのまとめ。
朝日新聞三浦記者が取材した、アフリカ中部のコンゴ民主共和国でレイプされた女性たちを守る病院。 - Togetterまとめ
「性器の傷跡を見ればどのグループの仕業かわかる」デニ・ムクウェゲ医師がコンゴの紛争資源と組織的性暴力について語ったこと - HIROKIM BLOG / 望月優大の日記

ダホメ王国の例の国旗は実在したのか?


この記事は、はっきりした結論がない上、身も蓋もなく夢もない内容です。あらかじめご了承ください。

さて、今回取り上げるのはこの国旗です。ネットでは何度も繰り返し話題になっています。

f:id:Hachi:20161025230919p:plain


ダホメ王国はこういう国です。
ダホメ王国 - Wikipedia

わたしがこの国旗を知ったのは、2014年の次の記事だったと思います。
ウィキペディアのおもしろい一文を探す - デイリーポータルZ
記事中に「これであってほしいのでそれ以上は調べてません。」とあるように、調べたら残念なことになりそうな気配が濃厚なのですが、そこをあえて調べてみます。

以前には、なんばりょうすけ氏が画像のソースに言及しています。
https://twitter.com/rna/status/431232476812288001

もう少し付け加えてまとめると、次のようになります。
ウィキペディア(ウィキメディア)のダホメ王国国旗画像には、2008年の画像Aと2012年の画像Bがあります。
File:Reino de Dahomey 1889.gif - Wikimedia Commons
File:Dahomey flag 1889.svg - Wikimedia Commons
画像Aは、『Flags of the World』の「Benin」に掲載されているもので、スペインのJaume Olle氏によるもの(1996年)。
ウィキメディアに画像Aをupした人物は、ほかにも多くの画像を上げているのですが、著作権侵害を指摘され削除警告を受けまくっています。
でも、Jaume Olle氏の画像に関しては、それ以前の2004年にウィキペディアとOlle氏との間で話がついているようです。
Benutzer:ALE!/Flaggen ? Wikipedia(ドイツ語・スペイン語)
画像Bは、画像Aをもとにした、ArnoldPlaton氏によるもの。
ゾウの目付きが、べつやくれいさんの絵みたいになっているのは、ArnoldPlaton氏のしわざです。

ちなみに、べつやくれいさんのツイートはこちら。
https://twitter.com/betsuyaku/status/422619448663486464

Jaume Olle氏は世界各地の旗画像を作成しており、石田三成の旗指物画像もあります。
Daimyo flags - Ohmi (Japan)

ウィキペディア・スペイン語版では、2016年7月に別の画像に差し替えられています。写実的なゾウです。
Diferencia entre revisiones de ≪Reino de Dahomey≫ - Wikipedia, la enciclopedia libre

ウィキペディア英語版では、画像の信頼性を疑問視する声があり、掲載されたり外されたりしています。
Talk:Dahomey - Wikipedia

画像Bに「Flag of the Kingdom of Dahomey (King Ghezo, 1889)」と説明があることに対し、ゲゾ王の在位(1818年-1858年)とのずれが指摘されています。

redditのスレッドや英語版のノート(トーク・ページ)では、画像Aの原典として、ゾウの旗を描いた絵画(版画?)が紹介されています(redditからのリンク先はこちら → 420_001.jpg)。
画像Aとはかなり違いがある絵なので、これが原典であるのならば、画像AとBは実際の旗とは別の独自の創作物と考えたほうがいいかもしれません。
また、この絵画が、実際の旗を正確に描写しているのかと言う問題もあります。
redditや英語版ノートでは、そもそも描かれている旗が国旗かどうかもはっきりしないということも書かれています。
www.reddit.com/r/vexillology/comments/19ufd5/flag_of_dahomey/
「Flag of Dahomey : vexillology」

もう少し詳しく調べたかったんですが、ここまでしか調べがつきませんでした。