コロンボ警部が怒るとき


ネタバレありです。ネタバレ部分は【以下ネタバレ】と書いて行を開けています。
※lieutenant=警部ではないんですが(コロンボの肩書)、ここでは吹替でなじんだコロンボ警部という呼び方にしておきます。

『刑事コロンボ』の主人公コロンボ警部は、罪を憎んで人を憎まずといった人物です。時として、犯人と仲良くなってしまうことさえあります。

そんなコロンボ警部も怒るときがあります。では、それはどんなときなのか?

『新刑事コロンボ』を除いた45作品の中で、次の三作品に怒るシーンがあります(あと一作あるのですが別枠で扱います)。

第15話 溶ける糸
 脚本:シリル・ヘンドリックス
 監督:ハイ・アヴァーバック
 ゲスト・スター:レナード・ニモイ

第26話 自縛の紐
 原案:ラリー・コーエン
 脚本:ピーター・S・フィッシャー
 監督:バーナード・L・コワルスキー
 ゲスト・スター:ロバート・コンラッド

第31話 5時30分の目撃者
 脚本:ピーター・S・フィッシャー
 監督:ハーヴェイ・ハート
 ゲスト・スター:ジョージ・ハミルトン

架空のキャラクターではありますが、以下、コロンボ警部の心中を推測してみます。

怒りに限りませんが、コロンボ警部の言動で気になるのは、本気なのか演技なのかという点です。

作り手の意図がすべてというわけではありませんが、マーク・ダウィッドジアク『刑事コロンボの秘密』(改訂版タイトル『刑事コロンボ レインコートの中のすべて』)によれば、「自縛の紐」「5時30分の目撃者」の脚本家ピーター・フィッシャーは、「私はコロンボの怒った姿が気に入っている。捜査のために怒ったふりをしているんじゃなくて、彼は本気で怒っていたんだ。」と語っています。

この三作品のうち二作品は、犯人が連続殺人を企てます。すでに起こった事件はともかく、捜査が始まったあとも犯行を重ねる犯人を、コロンボ警部は許せないのでしょう。
「自縛の紐」は連続殺人じゃないんですが、途中で起こった出来事に対し、「おまえさんのせいだよ(because of you)」と声を荒らげているので、怒る理由としては近いと思われます。
まわりにいた関係ない人たちにも態度がきつくなっている点も、本気の怒りを感じさせます。

また、コロンボ警部は、へらへらした態度も嫌いなようです。
「溶ける糸」では、笑い出す犯人に対して怒っていましたし、「5時30分の目撃者」で犯人じゃないボーデン先生に怒っていたのも、殺人という重大なことについて話しているのに、笑って話をかわそうとしたからでしょう。

あと、単なる偶然でしょうけど、医者に怒ったり、病院で怒ったりと、すべて医療がらみです。

【以下ネタバレ】










第1話 殺人処方箋
脚本:リチャード・レヴィンソン & ウィリアム・リンク
 監督:リチャード・アーヴィング
 ゲスト・スター:ジーン・バリー

コロンボ警部が怒る話といえば、まず第1話なんですが、リチャード・レビンソンは、「確かに、コロンボは怒ったように見えるだろう。でも違うんだ。それは彼女の反応を見るための、計算された行動だったのだ」と語っています(『刑事コロンボの秘密』)。

第1話には、コロンボ警部が共犯者を激しい態度で追い詰めるシーンがあり、そのあと、それとの関連を思わせる急展開を迎えます。

視聴者がコロンボ警部のキャラに慣れてからだと、あの怒りは本当だろうかとか、狙いはなんだろうかとか考えてしまい、そのあとの展開の衝撃が薄れてしまいます。
つまり、キャラが浸透していない第1話だからこそもっとも効果的に使える、視聴者への引っ掛けだったわけです



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