【感想】刑事コロンボ『殺しの序曲』:天才少女キャロライン登場


※ 2011年に書いた記事を書き直しました。


ネットで本作の感想を読むと、14歳の天才少女キャロラインをポンコツあつかいしている人が結構いて意外です。シグマ協会の中で、どう見てもキャロラインの能力が圧倒的じゃないですか。コロンボをさえ超えているかもしれません。しかも、犯人のブラントと違って、心にも余裕がありそうです。

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保険用の備品目録作りで、全部覚えているから家の中を見て回る必要がなかったり、犯人も知らなかった(忘れていた)難しい単語の意味を知っていたり、冒頭で描写されるのは、犯人のすごさではなく、キャロラインのすごさです。

銃声らしき音を聞いて犯行現場にシグマ協会員が駆けつけるシーンでは、キャロラインが不思議そうにしている顔がアップになります。
犯人が逃げる足音が聞こえない不自然さに、すぐに気がついたということでしょう。
冒頭で描写されていた記憶力のすごさだけでなく、観察力も鋭いことがわかります。
それにくらべ、キャロラインと犯人以外のシグマ協会員は、ありもしない足音を聞いたつもりになっています。

キャロラインは、コロンボに推理を披露します。
内容は、
 1.強盗ではなく計画殺人
 2.犯行は銃声の前
 3.銃声はニセモノ
 4.ニセの銃声はレコードの音
というものです。足音がしなかった点から、その時犯人はそこにいなかったことが導きだされています。

1、2、3は、大当たりです。
4も、トリックに使えそうな装置といえばレコードプレーヤーという点では、方向性としては悪くありません。推理力も高いことがわかります。
なぜ犯行時刻を誤認させるトリックが必要だったのかということなどを考えると、犯人確定まであと一歩という感じです。

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わたしはこの話を、天才と天才の対決ではなく、圧倒的天才ではないがなんとかやっていく道を見出したコロンボと、せっかくそれなりの能力があったのに優越感と劣等感に押しつぶされた哀れな二流の男の話として受け取りました。

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少数ながら、キャロラインの推理を評価している人は以前からいました。
刑事コロンボ/殺しの序曲<TVM> の レビュー・評価・クチコミ・感想 - みんなのシネマレビュー
このページでESPERANZAさんが「唯一まともなのは最小年の天才少女」と評しています。

Columbo: 5 things you may have missed watching "The Bye-Bye Sky High I.Q. Murder Case" - Biohazard Films
キャロラインの推理がほぼ当たっていることは、英語サイトでも言及されていました。

Carol Jones - IMDb
キャロラインを演じたキャロル・ジョーンズさんは放映時22歳で、撮影時にはたぶん21歳。ウェイトレス役のジェイミー・リー・カーティスさんより三歳年上です。
若く見える犯人を若い俳優が演じた『自縛の紐』に類するキャスティングになっています。大人が子供を演じることで、天才少女を表現したのでしょう。