【感想】『難船ス物語 第壱篇 猿ヶ嶋』


※2017年に書いた記事から分割して、加筆修正しました。
 animation.filmarchives.jp

1930年(1931年説もあり) 原作 脚色:清水秀雄 漫画製作:政岡憲三

※以下、ラストまでストーリーに触れていますのでご注意を

久しぶりに観たんですが、改めて観返すと、意外と暗い話です。

猿たちに育てられた少年が、尻尾がないことでからかわれ暴力的な反撃をします。
セリフ字幕が少なく動きで表現されている部分が多いので、双方がどの程度悪質なのかはっきりわからない部分もあるんですが、主人公の椰子の実攻撃は相手が死にかねないレベルだし無差別攻撃だし、ちょっとひどいんじゃないかと思いました。
でも、確かに猿のからかいはひどくて、椰子の木から落ちた主人公の歩き方をマネする部分はかなり陰湿です。
しかしさらに遡ると、主人公のせいで猿の頭にコブができたのにヘラヘラしてます。結論としてはどっちもひどい。

検索してみたら、わたしのほかにも主人公をひどいと思っている人がいました。
https://twitter.com/Shimo_x2/status/266452143349850112

難船ス物語 - Wikipedia
政岡憲三 - Wikipedia
ウィキペディアでは原作・脚本の「清水秀雄」からプロ野球選手のページにリンクされているんですが、1918年生まれなので同姓同名の別人ではないでしょうか。

戦前日本におけるアルベール・ロビダ原作アニメ - researchmap
こちらの記事によれば、アルベール・ロビダの『ファーランドール廻国記』(Voyages tres extraordinaires de Saturnin Farandoul)を原作としたイタリア映画があり、それを下敷きにしたアニメが『難船ス物語 第壱篇 猿ヶ嶋』だということです(クレジットは無し)。

アルベール・ロビダ - Wikipedia
Voyages très extraordinaires de Saturnin Farandoul — Wikipédia

YouTubeで見てみると、確かに冒頭の部分は『猿ヶ嶋』にそっくりです。
それ以降の海底シーンや空中シーンに比べると、冒頭の猿のシーンにはあまり力が入っていないように感じました。猿を演じる役者は、全身タイツのようなものに申し訳程度に尻尾などをつけています。
『猿ヶ嶋』と同じく猿による無尻尾差別があるものの、主人公は猿と争わず島を出ます。