ディズニーと「ロトスコープ」
一昨年にはてなダイアリーに書いた記事の再掲です。
※[追記] 北久保弘之さんによれば、マックス・フライシャーはロトスコープの特許を売ったと洋書に書かれているということなので、訴訟を考えた件などは事実と違っている可能性があります。その点を考慮に入れてお読みください。
https://twitter.com/LawofGreen/status/323090421444116480
「アニメ監督佐倉大(北久保弘之)氏の「勝手に一人WEBアヌメスタイル」第二夜」に、次のようなツイートがありました。
今の呟きがターニングポイント。すいません、どなたか、御存知の方が居らっしゃいましたらお教え頂きたいんですけど、「何故、フライシャーはライバルのディズニーに「ロトスコープ」の使用許諾をしたのか?」普通に考えれば肝心要の大発明をライバル会社に使用権 売るとは思えない。 #KHWAS
— 佐倉 大 (北久保弘之)さん (@LawofGreen) 2011年10月11日
ロトスコープに関しては以前から興味があったので検索してみました(以前の検索ではあまり収穫なし)。
まず見つかったのは、次の二つのページです。
「The Art of Roto: 2011」の「Disney」の項と、 http://www.animationshow.com/forums/lofiversion/index.php?t4572.html(リンク切れ)のRay Pointer氏の「Jan 18 2010, 02:22 AM」の書き込みに、ディズニーとロトスコープに関する記述があります。
ツイッターで簡単に内容紹介をしましたし、英語文献をたくさん読んでいるような人は、もっと詳しくて正確な情報をお持ちでしょうが、せっかく調べたので、もう少し詳しく紹介してみたいと思います(英語は苦手なので、あまりはっきりとしたことは書けませんが)。
最初のリンク先によれば、フライシャーはディズニーを訴えようとしたそうです。
しかし、フライシャー以前にすでに同じような機械があることがわかりました。
法的には訴えることは可能だったが、訴える気がなくなってしまったというようなことが書いてあります。
次のリンク先には、特許はロトスコープという装置に対するもので、実写の動きを引き写すというやり方に対するものではないというようなことが書いてあります。
また、特許の期限に関しても触れています。
ニール・ゲイブラー『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』の248-249ページには、ウォルトがロトスコープに反対していたことが書かれています。
検索してみようと思ったのは、ウォルトが反対しているのに、わざわざお金を出して使用許諾を得るだろうか、という疑問があったからです。
反対していたのは、ウォルトだけではありません。
ウィキペディア日本語版の『白雪姫』の項では、ロトスコープに関して、
ディズニーは実写映画と対抗するために、まず俳優の動きを実写で撮影し、そのフィルムからロトスコープで1枚ごとに動画を起こす、ライヴァルのフライシャー・スタジオの古い手法を模倣し、実写的な画風を実現した。
とだけ書かれていますが、英語版では、グリム・ナトウィックなどのスタッフがロトスコープに反対していたことなどに触れています。
Snow White and the Seven Dwarfs (1937 film) - Wikipedia, the free encyclopedia
ナトウィックの経歴に関しては、こちらをどうぞ。
Grim Natwickの仕事メモ:超円盤ゴミblog:So-netブログ
関連ページを三つ紹介しておきます。
An Interview with Grim Natwick
Rotoscoping and Motion Capture
The fairest film of all -- Snow White reassessed -- Page 4
Googleブックスで検索したところ、Leslie Cabarga 『The Fleischer Story』に少し情報があるようです。
調べていて思ったことですが、「ロトスコープ」という言葉には、定義の問題があります。
フライシャーが開発したロトスコープ装置そのものを使っているかという点のほかにも、実写映像を利用するに当たって、
1.輪郭までそのままなぞる
2.動きは使うが、形は変える
3.動きのタイミングを利用する
4.作画の参考にする程度
というような、レベルの違いが考えられます。
4はロトスコープとはいえないと思いますが、どこまでをロトスコープと呼ぶか人によって違い、それが情報を混乱させている面があるようです