ミッキーの目、手塚キャラの目


※2005年に書いた記事です。リンク切れの部分を修正しました。

以前、『MICKEY MOUSE 偉大なるネズミ伝説』を読んで、ミッキーマウスの目玉の変化は、途中から白目ができたのではなく目が縮んだのだということを知りました。
図で示すと以下のようになります。

f:id:Hachi:20190417002717j:plain

A B C

制作第3作で公開第1作の『蒸気船ウィリー』では、すでにBタイプの目になっています。
Bは、Aの目玉の下側の輪郭線を省略した形です。ミニーマウスのまつげの位置を見るとBの目玉はAと同じく大きいことがわかります。

目玉のサイズについて当時スタッフがどのように考えていたのか気になっていたのですが、最近「第4章「ミッキーマウス」(その1)」リンク切れhttp://sol.oops.jp/earlydays/mickey.shtml(『ディズニー総研』)を読んで、『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 The Illusion of Life』にこの件に関する記述があるのを知りました。当時のスタッフは、観客がミッキーの瞳を目全体だと勘違いしたので困っていたようです。

このような目の描き方の違いが、手塚キャラにもあります。
アセチレンランプには、大きい目の場合と小さい目の場合があります。
ヒゲオヤジには、Bのような目とCのような目があります。しかし、Aタイプの目は見当たりません(わたしが知らないだけかもしれませんが)。目の外側の線が、ミッキーマウスのように元々は目の輪郭線だったのか気になるところです(アニメ『マリン・エクスプレス』の設定書には「目のりんかくではない シワです」と書いてあります)。

【メモ】「これは○○の分!」


togetter.com

去年このtogetterのコメント欄に書いたことに、少し付け加えて書いておきます。これといった発見はないのでメモ程度です。

『TV Tropes』で検索すると、次のページが見つかります。
And This Is for... - TV Tropes

『TV Tropes』は大量の例が集まるので起源調査をするのに便利なんですが、残念ながら年代があまり書いてありません。
ざっと見たところ、古いものとしては『三銃士』(1844年)のほかに、『シャー・ナーメ』(1010年完成)と紀元前の『アエネーイス』があります。
シャー・ナーメ - Wikipedia
アエネーイス - Wikipedia

とりあえず、『アエネーイス』についてだけ調べてみました。
『TV Tropes』には、「Aeneas gets angry, says (roughly), "This is for Pallas!" and kills him.」とあります。
「This is for Pallas!」だとそれっぽいんですが、「roughly」とあるので本当にそう言っているのかがわかりません。
ラテン語原文をGoogle翻訳にかけてもよくわからなかったので、翻訳を確認しました。
小野塚友吉訳では「これはパラスの一撃だ。」、杉本正俊訳では「貴様を討って取る者はパラースなり。」となっています。
「パラスのための一撃」ではなく「パラスが振るう一撃」という意味のようです。
「これは○○の分!」の解釈にもよりますが、ニュアンスが違うかもしれません。

「これは○○の分!」は○○が一人の場合でも成り立つのかという問題もあります。
「これは○○の分!」のポイントは、個別の攻撃を個別の人物に紐付けることにあると思いますが、○○が一人だと、人物と紐付けられているのが個別の攻撃か攻撃全体かが明確でなく、「○○の仇!」と言うのとあまり違わないような気もします。

ここまでの内容を書いた後に、『刑事フォイル』の最終回「エリーズのために」を観ました。
感想サイトを見て知ったのですが、冒頭の「エリーズの仇だ」というセリフは、原語では「This is for Elise.」です。

日本語だと、「○○の仇!」と「これは○○の分!」はかなり違う表現ですが、英語では、どちらも「This is for ○○.」と表せるわけです。
英語やそれに近い言語では、「これは○○の分!」は、自然に生まれてくる発想なのかもしれません。

「Talk Nerdy To Me」と「コンピュータ言語で話そうゼ」Tシャツ


アメリカのオタク界では、かなり前から「Talk Nerdy To Me」というフレーズが流行っていて、たくさんのTシャツが売られています。
このフレーズの起源については、長いこと調べているんですが、いまだにわかりません。
以前あった「Origin of the "Talk Nerdy To Me" meme/saying?」(http://www.alisonhaislip.com/forum/index.php?topic=1557.0)というページも消えていました。そこにもはっきりした情報はありませんでしたが。
とりあえず、「Talk Nerdy To Me」と「コンピュータ言語で話そうゼ」Tシャツについて、いくつかの関連ページへリンクしておきます。

サイコドクターぶらり旅 - コンピュータ言語で話そうゼ(via Hanzi Smatter)
わたしが「Talk Nerdy To Me」を知ったのは、風野春樹氏による2005年のこの記事だったと思います。

hanzismatter.blogspot.com: Talk Nerdy To Me
風野氏の記事からリンクされている『Hanzi Smatter』の記事はこちらに移転しています。
「コンピュータ言語で話そうゼ」Tシャツの画像は消えています。
dirtyとnerdyの言葉遊び(dirty/nerdy wordplay)が指摘されています。

「コンピュータ言語で話そうゼ」Tシャツは、2003年には存在していたようです。
メガデモ[MEGADEMO]ダウンロード-メガデモ普及委員会
[アーカイブ] Jinx - Hacker Geek Nerd Gamer Computer T-Shirts TShirts Hats Sweatshirts Clothes Clothing Gaming Hacking TShirt TShirts Shirt Shirts

Geeky Turn-On - TV Tropes(aka: Talk Nerdy To Me)

2012年には、「Talk nerdy to me」と題するメリッサ・マーシャル氏のTEDでの講演が話題になりました。日本語ページでは「私に科学を熱く語って!」というタイトルになっています。
Melissa Marshall: メリッサ・マーシャル 「私に科学を熱く語って!」 | TED Talk
【TED】Talk nerdy to me | My Life with English 英語のある生活+スペイン語

「Talk Nerdy To Me」という曲は複数あるようですが、テレビ番組『King of The Nerds(オタクの王)』で歌われた「Talk Nerdy To Me」(2013年)を紹介します。

「ぞめる」と「ばえる」


先日、松岡昌宏さん出演の白髪染めコマーシャルを見ました。
決めゼリフは「つべこべ言わずに染めちゃいな」。「そめちゃいな」じゃなくて「ぞめちゃいな」です。
「白髪染め」の「染め」は、連濁で「ぞめ」になっているわけですが、「染め」単独なのに連濁させる違和感で印象を強めようということでしょう。


メンズビゲンワンプッシュ15秒 ワンプッシュでいかにも感ゼロ!篇


同じような、単独なのに連濁する例には、「今年の新語2018」大賞の「ばえる(映える)」があります。
「ばえる」は、あえて連濁させている人だけではなくて、本来の読み方を知らない人もいそうです。
2018年の選評|三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2018」
新語大賞の「映(ば)える」、新聞で使ってた? | 毎日ことば

去年「ばえる」が話題になった際、単独なのに連濁している例ってほかには無いんだろうかと思って調べたんですが、見つけることができませんでした。
改めて探してみると、次のページが見つかりました。「漬けマグロ」を例に挙げたツイートの紹介とともに、「ズリ(砂擦り)」と「ブクロ(池袋)」が挙げられています。
「今年の新語2018」大賞「映える(ばえる)」、「第九」の仲間説

複数の例があるのなら、それを表す言葉があってもよさそうですが、あるのかどうかは分かりませんでした。
言葉を作るのであれば「独立連濁」なんてどうでしょうか?

【英単語】「編」という意味の「arc」


2013年に『あまちゃん』に関する英語記事を読んでいて、「arc」という言葉を知りました。本来の意味の「弧」から発展した使われ方のようです。
どの記事で見たのかはっきり覚えていませんが、たとえば2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のスレッドを翻訳している次の記事では、「東京編」を「the Tokyo arc」と訳しています。「arc」は「編」なわけです。
マジで!? MAJI DE!?: "Amachan" enters the Tokyo arc, Rena Nounen says she's studying MomoClo for her movements

それほど特殊な言葉ではないと思うんですが、英和辞典ではあまり取り上げられていません。調べた中では次の辞書に記載がありました。ただし、「編」という訳語は載っていません。
『ジーニアス英和大辞典』では「(連続メロドラマの)一連の物語.」としています。
中型辞典では、『スーパー・アンカー英和辞典』に「(物語の)発展性,起伏.」とあります。2003年の第3版には載っておらず、2008年(2007年?)の『アンカーコズミカ英和辞典』で追加されています。

arcの意味・使い方|英辞郎 on the WEB:アルク
ネットで利用できる辞書では『英辞郎』に記載があり、前述の二つの辞書より詳しく説明がなされています。こちらにも「編」という訳語はありません。

ストーリーアーク - アメコミ@ wiki - アットウィキ
英和辞典以外ではこちらに解説があります。『英辞郎』よりさらに詳しく、アメコミにおける回数表示の説明もあります。こちらにも「編」という訳語はありません。

Story arc - Wikipedia
「story arc」という言い方もあるので調べてみると、ウィキペディア英語版に項目がありました。
テレビドラマ『Wiseguy』に関連して1988年に作られた言葉だということが書いてあります。

The ‘Story Arc’–a Ghost of Narrative Game Design
内容はよく読んでないんですが、『オックスフォード英語辞典』に「arc of story」の1978年の用例があるということですかね?

Story Arc - TV Tropes
『TV Tropes』にも項目があります。

https://twitter.com/kunori/status/823867035184558081
ツイッターでは、2017年にこちらで話題になっていました。「~編」という訳語が書かれています。

『アオイホノオ』に出てくる『アニメージュ』


※2015年に書いた「『アオイホノオ』の『アニメージュ』」に加筆修正しました。

テレビドラマ『アオイホノオ』第2話の「安彦良和特集やねんで」のシーンで出てくる『アニメージュ』は、Vol.17(1979年11月号)です。

それに対し、原作1巻97-99ページに出てくるのは、Vol.24(1980年6月号)だと思われます(ただし、タイトルははっきりとは見えないものの、『MYアニメージュ』という架空のもの)。この号は1巻のカバー画にも描かれています。

『BEST OF アニメージュ』の「アニメージュ総目録」で調べてみると、Vol.24ではガンダム特集に安彦氏が文を寄せていますが、安彦良和特集は無いようです。
一方Vol.17には、ドラマで画面にも出てくる安彦良和特集があります。別の号に変更になったのは考証の結果かもしれません。
ただし、1980年の「最新のアニメ雑誌」という点では、Vol.17だと少し古い気はします(原作では「新しいアニメ誌?」という質問のセリフはありますが、新しいのかどうかは明示されていません)。

第2話冒頭で「宮﨑演出のルパン」を観ているシーンでは、許可が取れなかったようで映像は出てきません。しかし、Vol.17の表紙として画面に宮﨑ルパンが登場します(大塚康生氏が描く『ルパン三世 カリオストロの城』)。Vol.17を使ったのは、宮﨑ルパンを登場させるという意味もあったのかもしれません。

アニメージュ VOL.17 1979年 11月号 第2巻第11号

アニメージュ VOL.17 1979年 11月号 第2巻第11号

 




マンガやアニメに実在の本が出てくるのが好きなんですが、『ペンと箸』第五話では『アオイホノオ』10巻が登場しています。
【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第五話:西原理恵子と鶏の唐揚げ - ぐるなび みんなのごはん

『二流小説家』の映画版(2013年)ではヒロインが姪に


デイヴィッド・ゴードン著『二流小説家』(原題:The Serialist)は、しがない中年男がモテまくる推理小説で、日本でいえば柚木草平シリーズを思わせます。
2013年には、『二流小説家 シリアリスト』というタイトルで日本で映画化されています。
二流小説家 - Wikipedia

メインヒロインは15歳の女子高生クレア・ナッシュ。主人公ハリー・ブロックのビジネス・パートナーです。

映画では、クレアに当たる小林亜衣(小池里奈)を、ハリーに当たる赤羽一兵(上川隆也)の姪に設定しています。
中年男と女子高生がビジネス・パートナーで、中年男は女子高生に頭が上がらないという設定でそのまま映画化すると、そういう関係に至るまでの経緯がかなり尺をとってしまいます。

映画では、設定を変更することによって、
なぜ中年男と女子高生が親しいのか? → 親戚だから
なぜ姪に頭が上がらないのか? → 居候だから
というように、設定だけで関係性がわかるようになっています。

原作は文庫で500ページを超える作品なので、本筋を追うだけでいっぱいいっぱいだというのは分かるんですが、せっかくヒロインのキャラが立ってるんで、本筋のほうを少し削っちゃえばよかったんじゃないかと思うんですけどね。

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

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二流小説家 シリアリスト [DVD]

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