副詞「普通に」の意味はなぜ通じにくいのか?


「ふつうに」という言葉を最近やたらに見かけるなと思っていたら、「ふつうに良かった映画」がはてなブログのお題になっていたのでした。

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お題を受けて書かれたブログをいくつか読むと、「普通に」という言葉の新しい用法がいまだに通じにくく、中ぐらいという意味の「普通」ととらえられてしまう場合があることがわかります。

2004年の2ちゃんねるのスレッドで、すでに意味の解明はかなり行われているのですが、2011年に毎日新聞の記事にこの言葉が取り上げられた際には、記者と記者の同僚に意味が通じていないことが話題となりました。

2004-2005年 「普通に」の意味を解明するスレ
2005年 『続弾!問題な日本語』
2006年 「普通においしい」 - 平野啓一郎 公式ブログ
2011年 はてなブックマーク - 牧太郎の大きな声では言えないが…:普通においしい? - 毎日jp(毎日新聞)
2011年 「普通にかわいい」考

これまでにもわかりやすい意味の説明は色々となされているのですが、井本亮氏の表現を借りてひとことで表すと、「逆接」ということになります。

井本氏の論文「「普通にかわいい」考」には、次のような例文があげられています。
「学食のラーメン,まずいって聞いていたけど,普通においしかった。」

このように逆接であることが明示されている場合はわかりやすいのですが、前提部分が省略されて、単に「普通においしかった」になることが多いので、わかりにくくなるのだと思います。

誤解を生みやすい例としては、
「学食のラーメンどうだった?」
「(まずいって聞いてるかもしれないけど)普通においしかった」
というような会話が考えられます。

このように、相手の考えを推測し、それに対して逆接でつなげ、逆接であることを明示しないという場合に、特にわかりにくくなってしまうのではないでしょうか。

わたしは「普通に」という言葉は普通に(年代的にわからないのではないかと思われるかもしれないがそうではなく、という逆接)わかるのですが、これだけ通じにくいとなると、むやみに使わないほうが無難かもしれません。